Returen the origin
 ライダースを自分でつくるようになってから、めっきりデコレートをしなくなった。理由はいくつかあって、折角の素晴らしいレザーに傷をつけたり、その味をワッペンやバッジなどで隠したくないという思いが一番強かった。しかし、英国に行く直前に一着ライダースをつくった。「MODE BY ROCKERS!!」ということをアピールするためにMBRを背負った。英国での数ヶ月間はほとんどピンバッジもつけずにいたのだけど、ある時に気づいた。「このプレーンに近い状態だと”ROCKERS”だとわかってもらえるのか?ただ革ジャンを来ている野郎と一緒ではないのか?日本にいる時は仲間も大勢いて、みんな自分がROCKERSを根本にMODE BY ROCKERSをやっているということを少なからず知ってくれていたけれど、こちらではそんな土台は全く無い。自分が「ROCKERS」ならばその正装をしなければそう認識してもらえないのではないか、と。

 丁度その辺りから自分の気持ちを再確認したために、「原点に還ろう」と決めた。昔は一人のRockerだった。そこから仲間が出来て、MBRを仲間たちが身につけてくれたのだ。いきなり見知らぬ黄色人がやってきて「俺のワッペンを買ってよ。」といった所でそれは「土産」もの扱いにされ、ただの商売人になってしまう。無料で配ることは簡単だが、それに気持ちはなかなかこもらない。自分がこちらで一人のROCKERとして認められるには時間が必要だ。

 ワッペンや、バッジを少しずつ増やしていく。どのバッジ、ワッペンをつけようか悩みながら。昔、サイズが大きかったけれど、ダブルのライダースを手に入れてデコレートした時の気持ちを思い出す。

 ROCKERSはROCKERSらしくなくっちゃいけない。そういう考え方って少し前まで嫌いだった。「自分なりのROCKERSスタイル」ってのがあってもいいとも思っていた。だけど、その歴史に沿うスタイルでないと厳密に言えば「ROCKERS」では無いのだ。日本人は独特の流行感覚があり、敏感にいろいろなものを取り入れてミックスする。それは、僕ら日本人の素敵なセンスではあるけれども、西洋化における歴史なんてまだまだ百年ぐらいしか無いわけで、日本独特の個性をどんどん捨ててきた僕らからしたら「歴史」という言葉はめんどくさいものに映ってしまうこともあるものだ。だが、ここは英国。自分がそうだと理解されたいのならシンプルにそれを表さなければいけない。

 当たり前のこの事に気づいた僕は決意した。「ROCKERS」として、それをはっきりと表す「もの」をつくろう、と。そんなわけでライダースは少しずつ思い出と共に派手になり、MODE BY ROCKERSのアイテムとして白ストールやトライアンフのベルトも制作することにした。さらに、バッジやワッペンなど「ROCKERS」としてのものを取り扱うことに決めた。だって、ROCKERSなんだから。



渡英前と渡英半年後