Vintage Glove "Gauntlet"のススメ
 英国製ヴィンテージガントレット、冬はこれで決まり!!古くは甲冑の「こて」など何百年も前から存在する伝統的なデザイン。1920年代のバイク雑誌を見るといくつものガントレットが!モーターサイクリストとも縁が深い一品。

 手首部分からの拡がり、長さによってライダースの袖口はすっぽりと包まれる。そのため袖口からの風の侵入もブロックし、手首を保護・保温する。冬には無くてはならないものだし、ルックス的にも大のお気に入りだ。

 カフェレーサーを駆る諸兄には経験がおありだと思うが、その前傾姿勢のためにライダースの袖口がかなり上まで引っ張られてしまい、手袋と袖口の間に見える肌の部分がなんともブサイクになる。ガントレットならばその点もカバーしてくれる。

 今回オンラインショップに予てから計画していた「ガントレット」などのグローブをアップする運びと相成った。(2005年初冬)古い英国製グローブをただヴィンテージのものとして売りさばくのではなく、手入れをしていると、その過程を紹介させてもらいたくなり今回エッセイを書かせてもらうことにした。そしてきっちり宣伝も兼ねて!!笑

 ガントレットは英語では「Gauntlet」と書き、「グォーントレット」とか「ゴゥーントレット」とかと発音される。「ガントレット」という発音が日本では一番ポピュラーだしその響きもカッコイイと思うため、その発音には中々慣れないし、きちんと発音できているのかは怪しい。

 英国ではさすが往年のモーターサイクル国家!? 50年代〜70年代のガントレットを部品市などでちょこちょこ見かける。初めてこちらで買ったガントレットは上の写真、左から2番目。こて部分に左端のものに付いているような三角のリフレクターが付いていた。それがかっこ悪く思えて、すぐにと取ってしまったために今でもそのステッチマークが残っている。そんなラフさもアリだろうと。

 コテ部分の長さ、フレアーも多種多様。最初は写真右のようにコテが広がりすぎているものには抵抗があったが、見慣れてくるとそれぞれにキャラクターがあり受け入れられるようになった。リフレクターの三角も今にして思えば、そのままにしておいても良かったかなと思う。それはその時代のデザインであり、大げさに言うならば歴史の一部なのだから。

 保守的なバランスの良さではつまらない、少しぐらい大げさに主張している方が面白みがあるのではと思う。

 さぁ、オンラインショップ掲載の準備にかかったものの、そのコンディションについて考えた。デッドストック、またはそれに近いものは革の質、裏地の汚れも問題なし、ただ「USED」になるとそうはいかない。レザーはしっかりしているが裏地が汚い・・・白いライニングが多いため汚れはどうしても目立つ上、手はかなり汗をかく部分。何十年も前の汚れがついたままというのはあまりいい気持ちではない。ひどいものは手を通すとホコリっぽかったり、匂いがあったりと。それを化粧直しもせず嫁に出すのは男親?(レザークラフツマン)としてどうかと思い、で手入れをすることにした。少しでも、より良い状態でそれらのグローブを楽しんでもらいたいから。また、これから書くお手入れ方法が諸兄のグローブをリフレッシュさせる手助けになれば幸いです。

*ではレッツ・ウォッシング!

 グローブをひっくり返してみる。手のひら、指の部分はやはりよく汚れている。裏地の指部分は表革と違い「筒」状に縫われてはいないことがほとんど。指先から指のつけ根までは開いた状態になっているので「指が全部ほどけている!」などとびっくりしないように。また、しっかりしているレザーは指先まで完全にひっくり返すことが困難な場合があるのでその時は無理をせず、指の付け根ぐらいまでで諦める。

(薄めの革で、既に古く、硬化が始っているものは革は水につけず、裏地だけ引っ張り出してそれのみを洗うように。)

このひっくり返した状態でクリーニングを行う。左は洗濯前!

ぬるま湯にしばらく付けておいた後(20分ほど)、少量の中性洗剤で洗う。レザーは軽く揉む程度にしておき、裏地を重点的に洗う。古いグローブの裏地は大半がアクリル製で、こだわりの品になるとラムウールなどが使われるよう。

 なんにしても白いものに長い間付着していた汚れだけに、再び「真っ白」にはならない。多少の色は付いたままになる。あまりムキになって強く揉み洗いをしすぎると破れてしまう恐れがあるため注意。

 レザーを水に浸して大丈夫なのかと言う声もありそうだが、少々ならば大丈夫だろう。きつい洗剤などを使うとその中のオイル分がどんどん抜けてしまい、レザーに大きなダメージを与えてしまうことになるかもしれないが。それに革はなめされる(皮膚からレザーへと作り変えられる工程)上で、水浸しになって作られるてゆくためにあまり神経質にならなくてもいいのではと思う。洗濯機で脱水をかける。手で絞るとねじれによって糸がきれてしまう恐れがあるためになるべく避けたいが、その場合はタオルドライなども行い丁寧に水気を切る。

 乾燥は陰干しで干すのもいいが、それだと時間がかかり生乾きの匂いがつくとも限らない。冬場にオススメなのはヒーターやコタツ!? 送風口から程よく離した所においておく。床には新聞紙を敷くと水分を吸ってくれる。まずは裏向けのまま乾かし、たまに様子を見てひっくり返したりしてみる。ほどよく乾いたところで表に返す。まだ裏地は表革に戻さずに分離している状態にする。(入り口のない手袋状態!?) 表革がドライになったところで(オイルがよく染み込んでいるものは少し湿っているように感じる)裏地を表に入れ込む。ここでのコツは再度べろりと指の付け根まで裏返してしまうことだ。そうすると指の付け根部分が目で確認できるため、裏地を各指ずつ確実に入れ込んでいくことが出来る。

 裏地にほつれがあることがある。親指の付け根、ダメージがよく見られるのでそれもさっと縫い付けてしまう。裏地の指先に穴が空いているとどうも貧しい気持ちになってしまうし付け心地もどうもよくない。ライダースにワッペンを縫いつけるロッカーならば造作もないことだろう。デッドストックに近いものでも、当時の製法の粗さゆえに指先がぱっくり開いているものも稀にある。「この穴さえなければすごくいいのに!」ということでそれも縫ってやる。そうして手を加えることで愛着もわくし、何より使い続けることが出来る。

古いものを愛でる、大事に物に年輪を加えてゆくことは大切なことだと思う。
たかがグローブ、されどグローブ。

左より、親指付け根のほつれ、リペア、レザーのリペア。




こうして、油分を最後に補われてリフレッシュ終了!!

オールドグローブには小まめに給油を!(月一程度)

 さて、お次は肝心のサイズについて。オンラインショップから現物をみずにオーダーするということは、中々難しい。自分で実際に手にとって試着できないということは不安にもつながる。グローブは人それぞれの好みのサイズ(ゆとり)があると思うが、ここを読んでもらう事で少しでもその不安をやわらげてもらえれば!

 まずは自分のサイズを測る。指の付け根から数センチ下がった辺りをぐるりと一周(画像参照)。グローブはこの幅が分割されて指のそれぞれの幅になるためにここが基準となる。そして今手持ちのグローブの同じ箇所を同じように測る。ここで重要なのはその「ゆとり」。

 自分のサイズ+3〜4cがオススメのサイズ。もちろん、夏物のライニングの無いバージョン、薄い革の物はこの限りではないが冬物でがっちりしているものの場合。これはライニングの厚み、指それぞれのゆとり、縫い代が外に出ていることなどを考えると決して「大きい」サイズではない。レザーの硬さなどによっては5c弱のゆとりがあっても気にならないかも知れない。また、真冬時にもう一枚薄手のウールなどのインナーグローブを重ねることも考えなければいけない。

 オーダーの前に是非この確認はしていただきたい。自分の寸法、そして手持ちのグローブ。その上で狙っている一品の寸法と比較する。革の雰囲気もできるだけお伝えしようと思うので、それを想像に加えた上でそれが貴方に合うものか、自分の許容範囲内のサイズかどうかを判断していただきたい。

参考までに自分のサイズは約21,5c

所持グローブの寸法は・・・
@25,5c(ゆとり4c)、革は柔らかめ、裏地はアクリル製。中に真冬にはもう一枚インナーグローブをつけれるゆとり有り。装着する際はレザーのソフトさも手伝ってスムーズだがゆるすぎるようには感じない。一番愛用しているもの。
A24,5c(ゆとり3c)、革は硬めでしっかりしている、裏地はウール製のもの、これだけで着用するならばベストサイズ。ただ、レザーの硬さも手伝ってもう一枚重ねれるかはきわどい。

こうしてみるとやはり自分のサイズ+3〜4cが標準の範囲かと思われる。





他の注意点としては・・・
*指の長さは手の甲の「中指」の長さを測ってお伝え。ただ、縫い代分もあるためにあくまで目安とお考えください。この部分もお手持ちのグローブと照らし合わせてください。


*最後に*
最近、自分の中の感覚が少し変わってきたように思います。日本に住んでいた時、自分にとって「歴史」という言葉は、ただ遠いところにあるようなものだと感じていました。英国に来て旧車・スタイル・ギアに直接触れ、それらを手に入れる事が出来ました。そして更に古いバイク雑誌・カタログなどを目にする機会が増えると共に、それらがその当時から存在しているものなんだと改めて実感すると、「歴史」を身近に感じることができるようになりました。レザーの質が現代と比べてあまりよくなかったり、形が今の日本製と比べて少しブサイクでお茶目だったり。しかし、そこにはきちんとした「味」があります。「古いから良い」という言葉の奥にある「歴史」皆さんにも身近に感じてもらえれば幸いです。。

2005年11月28日 掲載
2007年1月30日 訂正・加筆