SMOKING PARADISE "PARIS" |
イギリスがパブの国ならば、フランスはカフェの国だろう。至る所に、無意味なほどカフェがある。優雅にエスプレッソを飲み、タバコをくゆらすパリジャン。それは決まって、カフェの屋外席。しかし、ここで気をつけなければいけない事がある。カフェでは座る場所によって値段が違うのだ!!
屋外の席は一番値段が高く、続いて店内の普通の席、そしてカウンター席が一番安い席となる。確かに、ウェイターの移動距離を考えればなるほどと思うが、「優雅」にもお金がかかる訳だ。とは言っても、天気がいい日にくつろぐには最高の席だろうけれど。旅行に行く方はご注意されたし。 そして、もう一つカフェネタから。カウンターに座り、(もしくは店に寄っては立ったまま)さてタバコに火をつけようと思ったが灰皿が見当たらない。ウェイターに頼んだところ、面倒くさそうに「灰皿?あぁ、そこだよ。」とカウンターから身を乗り出して床を指差すではないか。一瞬、理解できるはずも無く、怪訝に床を見てみると吸殻、砂糖のパケット、灰が散乱!! 本当だった!! 確かに、いちいち灰皿を掃除する手間は省けるかもしれない、けれど、いちいち床を掃除する方が簡単なんだろうか!? カウンターに座り、タバコをふかす。トンッと灰を床に落とす。ポイッと床にタバコを落とし、足で踏み消す。んー、何だか悪い事をしているような気がするが、これが当たり前。まさにカルチャーショック!! |
話が前後するが、ロンドンのウォータールー駅を出発したユーロスターはパリの北駅(ガール・デュ・ノール)に到着。この駅付近のホテルを予約したため、駅を出て歩く。駅構内から外へ出たその時!「く、臭い!!!!!!」 強烈なお小水の香りが「華の都パリ」のイメージをことごとく打ち砕く。そしてすぐにホームレス二人組みが、「小銭くれー。」とたかってくる。パリの第一印象はそんな訳で、「最悪」だった。夜になると駅周辺の雰囲気はかなり悪く。ホームレスが至る所にいる。これがパリの入り口の一つかと思うと悲しい話だ。地下鉄「メトロ」の構内ではしばしばこの華のような、いや鼻をつく匂いに見舞われる事がある。日本では稀だし、ロンドンでさえ稀なのに何故なんだろう?「パリは臭い」とはこういう事だったのだ。 |
地下鉄「メトロ」のドアノブ。ドアを開けるにはこのノブを手動でちょっと引き上げなければいけない。数センチ動かしてやると突然「ガァー!」と扉が開く。慣れるまではどれくらい動かせばいいのか、そして予想以上の速さでドアが開くために驚く。地元民は電車が完璧に止まる直前に、扉を開け、停車と同時に降りるタイミングだ。これをおどおどせずにできればパリジャンに一歩近づく事ができるかも!? けど、これってボタンでいいんじゃないの?実際にボタン式、また自動式が投入されているようだが、大多数はこのタイプだった。ちなみにチケットは、パリ市内の「メトロ」では全線共通の「カルネ」と呼ばれる10枚つづりの回数券を使う。窓口で「カルネ、シルブプレ。」と言って購入。「プリーズ」としか言っていないけれど、フランス語を使った気になってご満悦。 |
パリの一押しエリアはここ、モンマルトル(Montmartre)の丘。パリの北に位置する丘でてっぺんには白亜のサクレ・クール聖堂が鎮座している。このエリアは下町だそうで、この丘に辿り着く前には「やれた」パリを楽しむ事ができる。路地の隙間から覗くサクレ・クールは下町とのコントラストもあって、紺碧の空を後ろにたたずむ姿は息を呑む。急な階段、細い路地、窓が傾いたり、塗装がボロボロの建物たち。そこはまるで何十年も前から時間が止まっているようで、映画のセットの中に迷い込んだような感覚。 |
サクレ・クール聖堂を越えて、奥の小道を進んでいくとそこはまさに理想の「パリ」だった!! 狭い通りにはカフェがひしめき合い、人々の喧騒がほどよい。アコーディオン弾きが現れ、人々の会話とタバコの煙を画に変えてしまう。通りには絵を売っている店も多い。絵描き達の作品が小道の花となる。 ふと別のカフェからはピアノの音色が漏れてきた。CDかと思いきや、狭いカフェの店内を占領するほどの、グランドピアノが置かれていて、着古したジャケットの衿を立てた老人が、いつもの日課のようにピアノを弾いている。カフェのウィンドウも時間が止まったようなデコレーションで、陶器製の紳士が花に囲まれている。モンマルトルはタイムレス。 |
セーヌ川にはいくつも橋があり、パリで最も古い橋「ポン・ヌフ」はレオス・カラックス監督の映画にも使われているので、知名度は高いだろう。その橋の西隣にある「ポン・デザール」(別名 芸術橋)はナポレオン1世が架けさせた、フランスで初の鉄骨橋だそうだが、ここではその歴史は横においておく。ここではそんな歴史より、カルチャーショックを楽しもう!!この歩行者専用の橋の上では、人々がそれぞれに酒や食べ物を持ち寄って、宴会をしているのだ!! 何故橋の上?風が通るから、天気がいい夜は気持ちよさそうだけど。若者だけでなく、結構身なりがきちんとした人もどんちゃんやっている。 |
Grands Boulevards (グラン・ブルヴァール)駅近くにある老舗食堂。パリ在住のマサヤ夫妻が案内してくれた最高のレストラン。天井が高く、照明、インテリアなど昔ながらの大衆食堂といった面持ちで、これまた勝手なパリ像にドンぴしゃり。ギャルソンはみんないい歳の男ばかりで、これまた味がある。しかも彼ら、英語は一切話さない。英語で「これは何ですか?」と聞いてもゆっくりフランス語で繰り返すだけ。笑 しかし、価格はお手ごろ(ワイン一本7ユーロでしかも美味い!!)、居酒屋感覚で色々小品を注文でき、憧れ(?)のエスカルゴも遂に食した。エスカルゴはガーリックバターのソテーのため、まったく臭みは無く、食べやすい貝類という感覚だった。この日はメインで子牛の舌なんかもオーダーして、フランスの食への探求に感服。ワインの肴にブルーチーズを頼んだ時、チーズにバターが沿えられていた。マサヤがバターをそのまま食えという。言われたとおりにすると、まるでクリームのように舌の上で溶けていく。全くしつこくない!! これがフレンチバターかと驚嘆した。チーズの臭みをバターが程よく抑えてくれてこれも最高!! この店があまりに気に入ったので、後日再び突撃。前回はマサヤ夫妻のフランス語に甘えていたが、今回はそうもいかない。何とか自力でオーダーするものの苦労の連続。メニューのことを「カルテ」、ピッチャーに入った水を「カラフド」というのだが、その違いを分かってもらえずに四苦八苦。フレンチ独特の「r」の発音のせいか?? (よくネタで、タンを吐く時のような音に例えられる)ワインは前回の時に、ボトルをデジカメで撮っておいたため、それを見せてオーダー。しかし、デザートをよく分からずにオーダーしたら生クリームの塊が出てきた。笑 が、食事のシメのエスプレッソと絶妙にマッチしたのでよしとしよう。旅の思い出はハプニングから・・・ |
週末は蚤の市へ繰り出した。何か音がする、と耳を澄ますと自家製(?)の簡易ピアノを軽快に弾きこなす初老の男性。「何かお宝が無いか?」とあくせくした空気を、どことなく滑稽でのんびりした映画の1シーンに変えてしまっていた。このピアノの上には彼のCDが置かれていたため、この蚤の市の空気を思い出せると思って購入。けれど、家で聴いてもどうも違う。しっくりこない。あの人々が行き交う場所で聞いたからこそ、その空間が一つになっていたのだろう。 |