Peaked Lapel Riders
 今回のコンセプトもロングシリーズに共通の「ライダース」に「テーラードジャケット(紳士服の伝統)」の要素を組み込むこと。特に、シングルジッパーでこの衿の形と実用性はあまりないが衿先まで伸びたジッパーが大きなポイント。これがMBRのデザイン、オリジナリティ。背中の切り替えは今までと違い上部が狭いカット。このヨーク部分のシャイプと、ウエスト下側の切り替えラインでMBRのエンブレムとリンクするように。レザーはタンニンなめしの馬革、1,2mm厚でオイルを加脂してもらい、張り、コシがしっかりあるもの。着こんでいくうちに馴染んでくる「自分のシェイプ」を期待させる。自分用ということもあり、大判2枚のレザーでエコノミカルに制作。シルエット、デザインを重視でバックスタイルは数パーツに分離。このようなパーツの分離が無く、一パーツが大きければ3枚の革は必要。裏地などにも定番の赤、黒ではなくて敢えて更に遊んだ黄色をチョイス。賛否両論あっても「〜っぽいよね」と日本は勿論、英国でも言われないことを第一に、遊び心を大事にしたオリジナリティ溢れる一品。


左:今回の大きな特徴である「ピークト・ラペル」。衿先までのジッパーの実用性はあまりないがデザインの大きなポイント。その下のスナップで衿を閉じた状態にもできる。

右:個人的に「仕立て」と言えば目が行くアームホール、袖付けは今回もステッチ無しで綺麗に見せることを選んだ。
胸ポケットは通常よりも幅を細めにし、衿との雰囲気を崩さないように。裏地の黄色をこのようにチーフっぽく見せることも出来る。写真では分かり分かりづらいが革の表情はやや無骨な感じがして「これぞ馬革なり」というもの。味がでるのがとても楽しみ。
右身頃のみ両玉縁ポケットを2段に。上のポケットはやや長さを狭めて、ジッパーは無し。このポケットは「飾り」と考えていたが実際に着用してみると結構この2段は重宝。縦の縫い目をまたいでのポケットは縫い代の関係で難易度が高くなる。
袖の裏地にはスーツの仕立てのようにストライプ生地を。袖部分にもキルティングを施しているが、ステッチ線でストライプを邪魔しないように生地のストライプ模様の上にステッチをかけてキルティングとしている。
裏面、前見返し。左右ともに内ポケットつきで、やや斜めに作っているため位置、使いやすさともに合格。また、このポケット配置のために見返しの部分のシェイプ、衿の邪魔をしないような位置関係には気を使った。試し、そして遊びとしてこのポケットの部分のみカンガルーの革を使用。以前仕入れたままだったので一度使ってみようと。
後ろ身頃の裏地。白い部分は試しに北米産の鹿革を使用。手触りは最高にすばらしいが色が色だけに汚れやすさに驚いた。特筆すべきはウエストから切り替わっているベンツのパターン(黒革部分)。細かい部分だが中心からみて左右対称になるように、そしてベンツの黒革自体もデザインとなるように。ウエスト部分には我がバンド「SHAKIN ROCKERS」のワッペン。


Oiled Conbi Jaket
 「気負わずに着れるライダースジャケット!」それがこのジャケットのコンセプト。と、同時にこの茶色のレザーを使用したかった。このレザーはグローブレザーといって、クロームなめしのレザーにオイルがたくさん加えられ、適度な硬さとしっとり加減がある革。全体的には、着丈を短めに設定。袖は今まで細くしてきたものをし落ち着いた寸法にして動きやすさを重視。コンビの黒革は柔らかなホースハイドをチョイス。グローブレザー(牛革)×馬革製
袖付けには、今回ステッチなし。
これだけで雰囲気がソフトに。
表には胸にしかポケットがないため、裏面の左右にポケットつき。ピッグスエードのため使いやすく、スナップをつけているので物が落ちる心配も皆無。
裏地も表地同様黒と青サテンのコンビ。インナーの綿を抑えるためのステッチはランダムに赤糸でステッチ。
革のアップ。適度なシボ(しわ)があり見た目にも柔らかさを感じる。


Long Double-Breasted Riders
NO.008 MASAHIKO.T
 「Peaked-Lapel Riders」と共通するディティールがいくつか見られるが、デザインの構想はこちらのほうが前。その後このジャケットを制作するにため、細部の煮詰めもかねてピークト(このページTOPのもの)をデザイン、先に制作したがどことなく似ている雰囲気を持つことに自分でも驚いた。表したかった形に近づいてきたのか、と。

 使用レザーはピークト同様、ホースハイド、タンニンなめしのもので1,2mm厚。しかし柔軟性はコチラのほうが勝っている。色合いもピークトが少し乾燥した風合いの「黒」に対して、こちらは潤いのある「黒」に仕上げていただいた。革を手に取ったときは少しコシが無さ過ぎるかと思ったが、実際に立体にしてみるとそのしなやかさと程よいコシが生まれた。

 特筆すべきはその贅沢さ。やや小判の馬革を5枚も使用。馬革は本当に気難しい素材で、部分による落差がとても難しい、そんな心配を微塵も考えることが無いように思い切った裁断となった。既製品のホースハイドで脇や袖の後ろ側など、普段はあまり見えないところなどに革質が全く違うところがあるはず。それは生産性を重視するためのものだが、このライダースはそんな中途半端なところを一切除いた、贅沢すぎる一品。
ダブル打ち合いでのロングはパターンでの煮詰め箇所が数多い。バランス、衿の大きさ、ジッパーの開閉の角度など幾重ものバランス。
ヨーク部分はMBRの中で一番引き合いに出されることが多いこのシェイプ。この形も勿論一品一品角度などが違う。あまり先端を延長しすぎると「やりすぎ」になってしまうので、アクがあるようで綺麗におさまるバランスをいつも模索。
左腕にはMBRの黒ワッペン。彼からの希望で黒とさせていただいた。全体の中に、うまく埋没してくれるのでひそかに主張。やはり「銀縁」のものの方が「ぱっ」と目を引くが、この真っ黒のものは隠れた演出家では?
袖にも今回はキルティング加工。なにぶん北海道にお住まいなので「極寒」仕様。袖の部分と身頃の部分は綿の厚みが違う。身頃部分には透湿も行う、上質で厚みのあるものをチョイス。
 
キルティングは一線一線縫う。いい色がないため市販のものなんて使わない。まず裏地を裁断、そこに綿を当てて大きめに裁断、2種の生地をピン止めして等間隔のラインを引き、ミシンがけ、周りの余分を切ってやっと一パーツ終了。そしてきれいにセンターをあわしたいのでズレは許されない。
 
裏地の上部切り替え部分。黒地に白ステッチが綺麗に映えている。胴体部分の青とのコントラストも非常に綺麗。
贅沢さを表す絶好の画像。これは裏面の前見返し(画像上部の黒パーツ)。大きな「裏面」のパーツにかかわらず切り替えは無し。廉価品ならば2,3パーツには分かれている。パーツを分けることで、余計な縫い代の厚みが表面に響くことを避けるためにも一パーツでの裁断。
 
裏ポケットは片身ごろのみ。ダブルの打ち合いのためジッパーを開けて、「スッ」と手を入れたところにポケットがあるようないい位置。この見返しも左右非対称のパーツとなるが、そのラインも左右でチグハグにならないラインを設定。
 
使用した馬革。この部分は画像では分かりにくいが馬の首の近くで、なんともいえない素のシワが入っている。それを後ろ身頃のベンツ付近に持ってきていますので、味が出てきたときには最高の雰囲気を持つはず。




「凛」とした雰囲気