BSA GOLD STAR OWNERS CLUB 2007 SUMMER RALLY 22nd-24th June 2007 Stratford Upon Avon |
久しぶりのツーリングはBSA ゴールドスター・オーナーズクラブのラリー!! これは年一回、ロンドンより160kmほど北西に位置する、コッツウォルズ地方の街「ストラトフォード」にゴルディ乗りが集まるイベントだ。ストラトフォードはシェイクスピア出生の地としても有名で、AVON川が街を流れるこじんまりした街。その街の外れにある競馬場がシーズンオフの時期はキャンプ場として使われていて、そこへ集合する。敷地内にはキャンパーのための設備(シャワーやランドリー、カフェ、パブ)が十分整っているため、モータースポーツ系イベントにも使われるよう。リッチ?なメンバーは近くのホテルやB&Bに宿泊する。 トライアンフで参加して冷笑を浴びる覚悟で行ったが、みんなフレンドリーに迎えてくれ、良き思い出となった。今回は日記調でエッセイをお送りしよう。 *6月22日(金) テント重すぎ&豪雨 天気予報が珍しく当り、当日は雨が降ったりやんだり微妙な天気。 しかし去年は参加を見送ってしまっていたので、今年こそは!と決行。 テント、寝袋などをキャスターがついたバッグに詰めるがトラのシートにはでか過ぎたため断念。結局1ポンドで買える、通称ランドリーバッグ(これに洗濯物をつめてランドリーに行くことから。英国の伝統!?))に荷物を詰め込む事に。そこで問題が!! アルミ製シートベースの溶接部分が一部割れているために、あまりにも重い荷物を積んでいると走行中にテールカウルの部分がちぎれ飛ぶ?と恐怖を覚える。が、それ以外に方法もなく、玉砕覚悟でなんとか全部積み込んだ。 しかし出発の直前にもう一人の日本人参加者「Masa」と連絡が取れ、一つテントの下に泊めてもらえる事になった!喜び勇んでテントを荷物から抜き去る。キャンピングベッド(この日のために買った)も無駄に重いので抜き去る。(持っていこうとしたテントは5kgほどあるものだった。ツーリング用などに1,5kg程度のものがあるとは知らなかった!アウトドアの勉強になった。) さて、やっとの思いで出発までこぎ付けたものの、天気がやはり怪しい。 ノースサーキュラーはこんな時に限って馬鹿みたいな渋滞。巨大な洗濯物入れをくくり付けた我が愛車では、すり抜けを思うようにできずイライラ。さんざん揉まれてやっと高速に入ったところでいよいよ本降りに。橋の下で無理やり停車して、車が通り過ぎるすぐ傍でなんとか雨具装着。 ストラトフォードまでは160kmほどの道のりだが、雨のためかなり長く感じた。 途中これまで体験した事がないほどの豪雨の洗礼を受けたが大きなトラブルは無く、無事到着。 午後9時過ぎに到着した時は、バーベキューは既に終わっていて、オーナーズクラブのメンバーはパブでのんびり中。そんな中、代表のマルコムとMasaが出迎えてくれた。 まずはギネスを一気に流し込んでほっと一息。しかし、最近はラガーよりも炭酸が少ないビター&エールが美味く感じてきた。日本ではビールには「つまみ」が基本のため、ビールも肴に合うように控え目な、薄味が多い。しかし、こちらでは品数が豊富でそれぞれにしっかりとした風味がある。これも「食べながら飲む」か「飲む時は飲むだけ」の違いなんだろう。ビールをつまみ無しで飲むのには最初驚いたが、慣れるものだな。「郷に入れば郷に従え」ということか。 さて、そうは言っても空腹だったので、バーベキューのささやかな残りものがあったので腹ごなし。 その後、親父さん達に混ぜてもらって話をしていると、 デイビッドという人から若かれし頃のROCKER話を聞くことができた。 彼は1964年、17才の時にBSA ゴールドスター・1958年式 DB32 350ccを10ポンド(現在の通貨に換算するといくらなのだろう?)で購入。その当時、ゴールドスターは今のように高嶺の花として祭り上げられていたバイクではなく、トライアンフのボンネビル達と同じように売られていたらしい。「ヴィンテージバイク」というよりも、「中古車」という感覚だったのかと思うと面白い。 デイビッドがバイクに乗り始めたのは、年上の友人がトライアンフのT100を購入した時に後ろに乗せてくれたそうで、 その体験がきっかけだったそうだ。当時は250cc以下のバイクならば簡単な手続きさえしてしまえば、テストも無しに自由に乗れたそう。ただ、その場合は「Lプレート」と呼ばれる「Learner(初心者)」マークをバイクに付けなければいけなかった。 そして、それ以上の排気量のバイクに乗るためにはテストを受けなければいけない。内容は検査官が街中のルートを説明し、そこを走り回るという簡単なものだったらしい。 面白かったのが急制動のテストの話。 テスト中に説明されたコースを走り回っていると、突然その検査官が道端から車道へ飛び出てくる!! そこで思いっきりの急制動!! まさに体を張ったそのテストに「あなたは何人の検査官を引き飛ばしたの?」なんてジョークを交わして盛り上がった。 さらにROCKER & MODのネタも飛び出た。 1965年の事、海辺の街ブライトンにDAVIDが2人の仲間とツーリングへ出かけた。ROCKERを気取って、レザージャケットにホワイトスカーフを巻いて祝日のブライトンに繰り出したそうだ。 イギリスの祝日(バンクホリデー)は月曜日。そのため金曜日の夜から月曜日のロング・ウィークエンドに、ブライトンなど海辺の街で規模がやや大きいイベントがあったよう。映画「さらば青春の光」の中での暴動も、バンクホリデーがあるウィークエンドに起こっている。劇中にも「バンクホリデー」という言葉が出てくるのでチェックしてみては?ちなみに「5ポンド」の事を「ファイバー」と言うのだが、この言葉も主人公ジミーが薬を買う際に出てくるので要チェック。色々なスラングを楽しむ事もこの映画の醍醐味!? そして、ACE CAFE REUNIONで使用するブライトンの海沿いの小道(マデイラ・ドライブ)は暴動が起こった場所であり、MODSの溜まり場だったそうだ。 デイビッド達はそのMODSの集まりを怖いもの見たさで、冷やかしに行こうとしたらしい。 バイクは別の場所に停め、そろそろとシーフロントに近づいていった矢先に MODSに見つかり、数十人のMODSに追いかけられる羽目に!! 「もう逃げるのに必死だった。車の下とかに隠れてなー。 なんとか逃げ切ってバイクに戻った時はどうやって走ってきたか覚えてなかったぐらいだ。」 そんな彼はその後、結婚を機にバイクを売ってしまったが、40年のブランクを経て数年前に同じモデル、BSA GOLD STARの350ccモデルを購入したそうだ。 「なぜ、またゴルディーにしたの?」と聞くと 「いろいろなバイクを考えてはいたんだけど、目にした途端にドキドキしてな! やっぱりこれしか無いと感じたんだ。」とアツイ返事。 「お前はトライアンフに乗ってるんだろう?俺らより遅いんじゃないのかい?」などと冗談を飛ばしてくる。 その後はテントに戻り、Masaのマン島TTなどの旅話を肴に、 土産にもらったウィスキーをチビチビやって就寝。 *6月23日(土) ゴールドスタートとの死闘? 翌日も微妙な天気。 敷地内にある設備でシャワーを浴びた。備え付けのボックスに特殊なコイン(トークン)を投入するとおよそ7分間シャワーが出る仕組みになっている。このトークン購入はキャンプサイトの端にある受付まで行かなくてはならないため 「なぜ普通の硬貨じゃだめなんだ?」と思ったが、現金だとボックスが壊されてしまうからだろうな。 少し脱線するが、それと同じ理由でヨーロッパでは自販機を見ることは非常に稀だ。あったとしても駅の構内だったり、空港だったり。街中や田舎道にポツンとあることは皆無だ。そう考えると自動販売機がどこにでもある日本はまだまだ安全?しかし自販機荒らしが存在するのに、自販機が無くならない事も不思議と言えば不思議か。 それはともかく、今回最も楽しみにしていたショート・ツーリングは何とか決行されるようだ。 出発時間になると、一斉に20台を超すゴールドスターに火が入る。 まさに、爆音。 GPキャブ装着車が9割で、レース用のキャブレター故にアイドリングが無い。絶えず吹かしてやらなければいけない。レース場の匂いがする!!これだけでもたまらないのに、これから一緒に走ってしまうんだから。すでに感動中。 競馬場を出て、10分も走ると田舎道となり、辺りは草原になる。 片側一車線のため、序盤〜中盤は時速100km程度で流して、途中小さな街のカフェで休憩。ちゃんとしたポットで出てくる紅茶が安くて驚いた!しかし、ロンドン生活の中で基本はティーバッグなので、すでに葉にお湯が満たされたポットと別にお湯だけのポットを持ってこられてもどうやって飲むのかが分からない・・・3杯飲んでもまだお湯が余ってるのは何故だ? んんー。 紅茶と格闘していると、デイビッドが「俺らはクレイジーなクロスミッションのバイクに乗ってるからな。まだ2速までしか使ってないぜ。お前はもう使い切ってるんじゃないのか?」と、またちゃちゃをいれてくる。気にして、構ってくれているんだと分かる、嬉しいものだ。ストレートに「優しさ」を見せず、皮肉に置き換えてくるところが英国気質なのだろう。 そして後半。片側2車線で道幅も広く、草原に高速道路があるようだ。 全体のペースが上がる。抜きつ抜かれつ。誰かがスロットルをワイドに開けると数台がそれに習う。120kmでついて行っている横をデイビッドにぶち抜かれた。その速度の伸びは凄い!! 抜かれる時に「ニヤリ」と互いに笑みを交わす。 バイクで駆ける時も、音にのせて踊る時も、このアイコンタクトがいい。 その瞬間、楽しい瞬間を共有できたと実感できる。それは肌の色が違ったって変わらない。言葉もいらない。 それが本物だと思う。 さぁさぁ、抜かれた嬉しい悔しさをどうお返ししようか。 デイビッドを先頭にゴールドスター達が連なっている。 自分はグループの中ごろで虎視眈々とチャンスをうかがう。 ふとした時に右車線に誰もいない間ができた、 と同時にギアを一速下げ、一気にスロットル全開で追い抜き車線へ飛び出す! 数台を抜き去り、いよいよ先頭のデイビッドへ!! トライアンフの排気音に気づいた彼は、「やるじゃねぇか」的な表情。 「ニヤリ」を再び交わして今度は自分が先頭へ! ツーリング後に、あの田舎道は70km強の距離があったと聞いたが 高潮していたせいだろう、ほんの数十キロにしか感じなかった。 このツーリングは最高の思い出だ!! 夕方はゆったりとした時間だったため、ストラトフォードの街までMasaと男二人。美しい田舎の小道をてくてく歩いた。夕立に合い、近くのパブで一杯飲んだ事もよき旅の思い出だ。 夜は前菜から始まる、ちゃんとしたディナータイム。スーツまで着ている人もいるぐらい。この辺りはさすがゴルディーを所有する大人、と言ったところか。 テーブルは地区毎に分かれているため、ACE CAFEでもたまに見かける人と一緒のロンドンエリア・テーブルに。バイクの話もそこそこに、食べ物の話でなぜか盛り上がる。 そして、ここで抽選会。イギリス人が大好きな「ラッフル」だ。簡単に言うと自分がすでに持っている番号が引かれるとあたり、という単純なもの。それになんと、2つも当たってしまった!ドライバーセットと一年間の会費免除をゲット!! 「多分これで運を使い果たして、帰りにバイクが壊れちゃうだろうね。」と冗談を言っていたが、現実になるとは・・・ ディナー&ラッフルの後はこれまたイギリス人の好きなディスコタイム。DJが年代ごちゃ混ぜに、ロックンロールからポップスまで何でもかける。そして、踊り好きな紳士淑女が踊る、踊る。みんなちゃんと自分のステップがあるようで若い頃から踊ってるんだなーと関心させられる。 オーナーズクラブの代表マルコムとその奥さん、カリンがジャイブを綺麗に踊っているのを発見。バーカウンターでマルコムと一緒になったので「ジャイブが上手いね。」と言うと「お前も踊れるのかい?もし踊れるんだったらカリンと踊りなよ。」と。 「そんな事言ったって、前で踊ったらそれこそテーブルみんなの視線を浴びてしまうではないか!」と、テーブルに戻ってひっそりしていると、カリンが無言で近寄ってきて手を差し伸べるではないか。これは受けねばなるまい。と腹をくくりつつ、マルコムに声をかけた自分を恨む。 ジャイブを踊るには遅い曲が続いたが、それでも3曲ほどクルクルとカリンは回り続ける。踊り終わって席に戻ろうとテーブルを抜ける度に、親父さんたちが「ウェルダーン(よくやった!)」と下手くそジャイブにねぎらいの言葉をかけてくれた。非常に照れたが、エンターテイメントにはなったのでは!? 笑 *6月24日(日) レスキュー3時間待ち 翌日、起きてカフェに行くと、そこでも「昨日はナイスダンスだったぜ、俺らにも今度教えてくれよ。」などと踊りの事をネタにされる始末。若い(?)日本人がジャイブを踊っているのがよっぽど珍しかったんだろう。ちゃんとジャイブを習いに行くか・・・ マルコム、カリンと話していると、色々なロックンロールのウィークエンダーに行っているとの事。去年自分も参加した、Wildest Cats In Town にも!! だから踊りがうまいんだなー。この翌週にもイベントへ行くそうだ。 残念ながらこの日は朝から雨、雨、雨。 予定の中に、ひときわ目を引く「World Champion Kickstart Competition」(キックスタート世界チャンピオン)というふざけた項目があったため、何をするのか期待していたが結局それも中止。まぁ、誰が一番早くエンジンをかけれるか、もしくはかからないか、とかいう類のジョークイベントだったんだろうけどさ。 昼ごろにはほとんどのゴルディーが姿を消したため、自分もそろそろ帰ることに。 Masaは旅の日程でもう一泊するとの事だったので、ストラトフォードで昼飯を食べそこで別れを告げる。 帰りの道中、ちょうど半分ぐらいまでロンドンで進んだところでトラブル発生。 サービスエリアに給油をするために寄ったところ、低速になった時にエンジン停止。 サービスエリアに入るちょっと前の路上で、荷物を全部降ろしてチェック。 ヘッドライトの光が弱すぎる事を発見。色々と試したが、バッテリーをチャージャーをガソリンスタンドでも借りられなかったためここでリタイア。 英国で2度目となる、レスキューを呼ぶ。「一時間以内でバンがそちらに向かいますので。」と言われたが、2時間待っても来ない。もう一度確認したところ、近くでカーレースが行われていたため、帰りの渋滞がひどく、到着が遅れているらしい。 3時間待って、バンが到着した頃には雨と風の所為で体が冷え切っていた。「早く家までバイクと俺を届けてオクレ。」と思っているとなにやら配線のチェックやバッテリー充電を始める始末。そんな事して、もし直ったら雨の中また自走!? 勘弁してくれー、と寒さのため弱音全開。バッテリーのボルテージは少し回復したものの、途中でまた同じように停止したら家に帰り着くのは次の日になりそうなので、家まで送っていく事を承諾させる。 あたたかいバンの中で、ぺちゃくちゃと日本車をこよなく愛する英国人ドライバーとおしゃべりしていると50kmほどの距離もあっという間で、自宅へ到着。いやいや、助かりました。英国の保険では、故障時のレスキューもカバーされているため無料!! やはりラッフルの時に運を使い果たしていたようで 他力本願で終了したゴールドスター・オーナーズクラブミーティング!! (後日、問題はバッテリーの寿命ではなく、レギュレート・レクチファイアがいかれた事と判明。Thank you Barry Shinya!!) |