MANX GRANG PRIX 2007 --1-- 23/24/Aug/2007 |
![]() マン島は、兵庫県にある淡路島(あわじしま)とほぼ同じ大きさの島で、長さ53km、幅21km。イギリスのリバプールよりフェリーで2時間半。アイルランドとの間に位置する小島。「イギリスにある全ての景色が見られる」、「50年前の良きイギリスがまだ残っている」、とも言われ、その小ささとは反比例して見所満載の魅力的な島。面白い事に、この小さな島には自治権があり(議会の起こりは世界一古いと言われているそう。)外交権、防衛面はUKに委ねているものの、一つの「国」である。通貨はポンド、本土の通貨は使用可能。しかし、マン島で発行される紙幣・硬貨は同じポンドでありながらマンクス(マン島の)・ポンドとなり、本土では使用できない。また、独自の法があるために、今年7月からイギリス全土では公共の屋内では全面禁煙となったが (eg:パブの店内、オフィス内、仕事で使う車内 など)、 マン島では未だに屋内での喫煙が可能!! そして法人税、個人税の税率が低く、相続税が0という事からTAX HEAVENと呼ばれるそうだ。マン島はイギリスのようで、イギリスではない、不思議な存在。 |
![]() そしてもう一つのレースが毎年8月の末から9月の上旬にかけて行われるManx Grand Prix (マンクス・グランプリ)と呼ばれるアマチュアレーサー達のレースであり、クラシックバイクのレースも行われる。マンクスグランプリは、もともと1923年より始まったがその名称になったのは1930年から。TTに比べ規模は小さいが、より多くのクラシックバイクファンが集い、フレンドリー且つ、リラックスした雰囲気で楽しめるレースウィークとして知られている。お祭り騒ぎ、モダンバイクが街に溢れ返るTTに比べ、落ち着いてクラシックバイクと共にマン島自体もじっくり楽しめるのがグランプリではないだろうか。 実際にどちらが好みかは意見が分かれる所。TT・Manx GPの季節になると、リバプールやヘイシャムなど、いくつかの港よりマン島の首都 ダグラスを目指してバイクを満載に積んだフェリーが一日に何便も運行される。特に今年のTTは100周年だったため、フェリーを一年以上前から予約するのは当たり前だったようだ!また毎年の常連は、とことん通うため10回以上通い続けるモーターサイクリスト多数(中には20回以上!)。そして彼らはなじみのホテルや、もしくはそのレース期間だけのホームステイ先を見つけ、マン島を離れる際に次の年の予約もしていくと言う。 |
![]() しかし、フェリーの予約をした数日後に愛車と共に、車に当てられる事故に遭ってしまった。保険会社から代車があてがわれたが、せっかくなので自分の単車で行きたいと願っていたところ、何とマン島出発の前日に事故修理が無事に完了し、晴れてトライアンフで出発!! |
8月23日(木) 1日目 ロンドン出発・ダビダ・テント設営 |
![]() 高速道路をひたすら北へ向かう。途中、何箇所か工事中の所もあり、長々と渋滞に巻き込まれてしまい時間を喰ってしまった。昨日復活したばかりの愛車は調子がいい。出発直前にオイルを交換し、ケーブルにも念のため注油。万が一、に備えて今回はコンセントで使えるバッテリーチャージャーまでも持参。コベントリーを過ぎ、バーミンガムまで来てやっと半分強。しばらく走っていると天気が良くなってきたため、ようやく雨具を脱ぎ捨てる。それでもTシャツの上にフリースを着て、ジャケットを羽織っているのだから8月とは思えない事が容易に分かってもらえるはず。バーミンガムからストーク・オン・トレントまで来るとあと4分の1だ。リバプールまでマイル表示が現れるようになり、いよいよ胸が高鳴ってくる。が、リバプールの高速の降り口からフェリー乗り場までは10km弱の距離がある。一応、道のりはメモしていたが、幸い降り口からすぐにフェリー乗り場のサインが出ていたためそれに従い走ってゆく。時間は既に6時ごろ。さすがにそろそろ着いておかないとやばいな、と思い始める。サインを追い、走っているとある事に気が付いた。フェリーのマークが分岐点で両方に出ているではないか。「ひょっとして、いくつも港があるのか?」と思い地図を見てみると自分はマン島行きのフェリーには向かっておらず、それよりも数キロ北の港へ向かっていることが判明!時間が刻々と近づいて来るため、かなり焦ってきた。が、幸いそこから港までは数キロで 海沿いの道に出てしまえば、そこから少し下るだけで済んだ。その手前で引き返していたら無駄に時間がかかってしまっただろう。危なかった。下っていく道中には、巨大な朽ちたウェアハウス(倉庫)が並んでいて日本とはまた違う港の表情があり、思わぬ景色との出会いがあった。写真を撮ればよかったのだが、出発まで間もないため一路港へ向かう。「マン島行き」の看板を見つけ安堵のため息。そしてバイクに乗ったまま、チェックインする。予約時にパソコンの画面をプリントアウトしたものを提示して、札とレーン番号を言われるだけ。指示に従って、敷地内を進んでいくとモーターサイクルの一団が見えてきて、ここで一気に力が抜けた。 ![]() そうこうしている内に、フェリーへバイクを積み込む時間となり、船内にトライアンフを滑り込ませる。すると既にその倍以上のバイクがもう積まれているではないか。毎回これだけのバイクを運んでいるとなると、どれだけのバイカーがマン島にひしめいているのだろう?船内の半分ほどはクラシックバイクで、みんな様々なところから集まって来ているようだ。落ち着いて席につくと同時に、ギネスで一杯。FIDDY,SHARON,PETER(ピーター)のダビダ勢と同席して話をする。一杯やると疲れが出てきたので、適当な話の区切りで席を立ち、デッキに上がる。リバプールの街を眺めつつ一服。船内の売店でマン島の地図を購入し、お釣りにマン島の紙幣、硬貨を渡されるといよいよ念願のマン島へ渡るんだとはっきり実感。 再びデッキでのんびり夕日を見ながらぼんやりしていると、色々な乗客と目が合い、少し話す。95%の乗客はモーターサイクリストだ。やれマン島は何回目だとか、どこに泊まるか、何のバイクに乗っているか、そんな話ばかりで、すでに皆がこのフェリーをマン島の一部だと思っているかのようにフレンドリーで、これからの旅が楽しみになってくる。 |
![]() 前を走る車が、道路の真ん中でいきなり停車したため、クラクションを鳴らそうとしたその時、運転手が降りてきてこう言った。「フロントライトが点いてないよ!」 あ、ありがとう、と思うと同時に、船から下りた時に何人かがえらく自分に声援を送っていたのは「ライトを点けろー!」と叫んでいたのだと納得。何を言っているのか、排気音とヘルメットで聞こえなかったため、とりあえず手を上げて挨拶した自分に笑えた。 夜9時半ダグラス到着のため、さすがに日はどっぷり暮れている。初めてのマン島で、キャンプ生活。まずは一番近いキャンプサイトを目指す事にしていた。そのサイトはダグラスのやや北にある、レースのスタートとゴール地点、グランドスタンドの真裏にあるものだ。マン島は狭い、とはいえ新しいマップと新しい土地での距離感がつかめずどこで曲がるのか、行き過ぎてはいないか不安になる。時刻は既に10時を過ぎていて、ダグラスのホテルが並ぶエリア以外は驚くほど静まり返っている。グランドスタンドを過ぎてすぐ右手にあるはずだが、ポリスの大きなヘッドクォーターサインしか見当たらない。不思議に思いながらもまっすぐに進んでいると「Welcome to Onchan」というサインが出てきた。これは絶対に行き過ぎているし、この街?の名前は読めないぞ。おんちゃん?? 変な名前だなぁーと思いつつ引き返す。先ほどの、ポリスの大きなサインがある道以外にキャンプサイトがあるような所が無いため、恐る恐る小道に入って行くといくつかのテントやトレーラーが見えてきた。やっぱりここだったんだ。何故キャンプサイトのサインが道路に一つも無いんだ?と怪訝に思いながらも空きスペースが無いかトライアンフをゆっくり進ませる。突き当たったところにトイレとシャワー場があり、左に曲がる。周りはバンや大きなテントばかりだったが、こじんまりしたテントを見つけ、その横にスペースを発見! エンジンを切り、その芝生の斜面にバイクを停めようと押したが、タンクバッグがつっかえ力が入りにくい。その上、夜露で滑りやすく、危うく荷物もろともひっくり返る所だった。地面が柔らかいので、サイドスタンドの下に空のペットボトルを差し込み、地面にめり込み過ぎないようにする。そこで荷物を降ろし、タバコに火をつける。やれやれ、どうにか寝る場所を見つける事ができた。一息ついてからテントの設営。実は購入後、部屋で組み立てようとしたがスペースの都合で断念。 結局これがこのテントでは初めてだ。しかし、良く作られているもので、ド素人でもスムーズに設営完了。荷物をテントに入れ、エアーマットを膨らます。これだって、バルブを開けると勝手に空気が入る仕組みになっている。どうなっているんだ?イギリスの廉価製品を取り扱う店ではエアーマットは全て手動で空気を入れるようになっていたぞ。恐るべし日本製品のクオリティ。 そして体が冷えているので、これまた新品のストーブ(キャンプ用バーナー)を試してみるか、と愛車からガソリンを拝借しストーブのタンクへ。まずはタンク内のガソリンがノズルから気体となって出てくるまで、本体を熱さなければいけない。固形燃料を使えとあるがそんなもの持ってる筈も無いので、ライターで色々と炙っては、ガソリンが出てこないかコックを開いたり閉じたりしていた。外は風が強いため思うようにライターの火が続かず痺れを切らして、愚かにも風を防ぐためにテントのシート内にてそれを行おうとした瞬間!コックから滲んだガソリンに火が点き、高さ50cmほどの火柱が!!慌てて本体を外に出し、コックを閉じた。ふぅ、危うく丸焼けになるところだった。このストーブは燃焼時の音が大き目とあったので、今日は下手に挑戦せずにおとなしくあきらめる事に。体も冷えているし、新しい寝袋とエアーマットの具合をちょっと確かめようかとモゾモゾミイラ型の寝袋に入り込むと、そのまま眠りに落ちた。 |
8月24日(金)2日目 スネイフェル・北端・テントの斜面 |
![]() ![]() マン島の一日目の朝をレーシングマシーンの音をバックミュージックにのんびりと過ごしながら、今日の予定を考えてみる。前もってきちんと計画を立てるのは性に合わず、行ってから気分で決めるのが楽しい。まずはダグラスを出発し、TTコースの一部であるSnaefell(スネイフェル山)の山越え道を走り、マン島の最北端にでも行ってみる事にした。TTコースを途中まで逆走する事になる。 ![]() ![]() ![]() 山道(TTコースは全体をTTマウンテンコースと言い、スネイフェルの部分を特にマウンテンセクションと呼ばれる)は信号が全くと言っていいほど無く、平均速度が80kmはある。いや、制限時速が80kmだったかもしれない。のんびり走っていると、いきなり地元の車に抜かされたり、レース気分で走っているバイクにすごい勢いで抜かされてヒヤッとする事が多々ある。ミュージアムからの道を進んでいくと、山を降り「Ramsey」(ラムゼイ、もしくはラムジー)の街に着く。山を降りる道はなだらかな山の先に、水平線と海沿いに白い街並みが眼下に広がりとにかく美しい。写真を撮りたかったが、カーブが続き、道幅が狭くなっているので停車が難しく断念。 |
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![]() 昨日、フェリーに乗る時は気にしていなかったが、フィディーは最高速度300kmを超えるスズキ・ハヤブサに乗り、ピーターはオーストラリアメーカーのKTMの機敏そうなモトクロスバイク、レディー・シャロンは男顔負けのドゥカティのモンスター900。ちょっと待ってくれ。そんな最新鋭のバイクと共に自分の「クラシックバイク」が一緒にこれから山越えをするのか?速度帯が合う筈無いだろうが、向こうも大人。こっちに気を使ってくれるかな?と思ったが、それは最初の数分だけで、ヘアピン、グースネックを超えて走りやすい道に出た途端、ハヤブサとモンスターはとんでも無い加速で車をどんどん追い越しだした!!負けて当然だが、負けるのもしゃくで必死についていく。回転は5500を平気で超え、素早くギアチェンジをしてカーブと遅い車を抜くタイミングを見計らう。「何でこんなに本気で走っているんだろう?」と疑問に思いつつも、差は開くばかりだが、トライアンフに鞭を打つ。KTMに乗るピーターは自分の後ろをついて来てくれていて、本当はもっと速く走りたいのに、自分に気を使ってくれているのかと思うと申し訳ない。が、自分ももう一杯一杯だ。 死にそうになりながら山を越え、ダグラスに入る。するとシャロンが言う「グランドスタンドのパドックに入っていくから係りに停められると思うけれど、それを無視して中に入っていくのよ。あんたは英語が分からない事にしてなさい。」 「ん?そこって俺のテントがあるところなんだけど、ひょっとして、その敷地ってレーサー用??」と聞くと「そうよ。」とさらり。だからシャワーがタダなんだ、だからテント代を払わなくてよかったんだ。何故ならレースに参加する人はすでに払っているから! しかし、周りのレーサー達、何にも言って来ないもんな。朝だってグッドモーニングやら、バイクの話だけだったし。ひょっとしたらレーサーの友達だと思ってるのか、別に気にしていないのか・・・シャロンは言う「あんた、ラッキーね。誰かに咎められるまでそこにいなさいよ。」と。昨日到着した時は、夜遅くで、警備員がもう仕事を終えていたために紛れ込めたのだった。ラッキー!? ![]() ![]() |
![]() ![]() そろそろ眠気がやって来たので、お開きにする。寝袋にくるまって家の中で寝られると思いきや、フィディ、ピーターが先に寝ているテントへ連れて行かれた。辺りに街灯が全く無いため、豪華な星空が広がっている。それとは一変し、狭くむさ苦しいテントに入り、男3人で寝る。頭を互い違いにすると、自分の頭は斜面に対して下向きになり何とも寝づらい!頭に血が上りながら寝付くのは大変だったし、隣のフィディが動くと自分も起きてしまう。やれやれ、これじゃ疲れが取れないなーと思いつつ何とか就寝。まだマン島2日目?まだ五分の一しか過ぎていないのに一週間ぐらいいる気がする。時間の感覚が全く無い!! 3日目に続く。 |
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